研究概要
中間貯蔵施設周辺地域が融合的に環境再生・環境創生していくための統合的な研究を実施するものである。中間貯蔵施設に搬入された除去土壌や除染廃棄物の県外最終処分を着実に実施するために、個別技術開発とそれら要素技術を組み合わせた技術システムが重要となる。ただし、個別技術は様々であり、飛灰等の廃棄物や除去土壌(特に比較的高濃度のもの)に適用する技術選択によって県外最終処分量と濃度に大きな違いが出てくることが示唆されている。そこで、導入する技術システムのシナリオ評価を行い、県外最終処分される量や濃度、そして経済性の評価を実施することで、国の戦略目標である2024年度以降の具体的な技術開発を選択する指標を提示する。
また、県外最終処分に向け、これまで十分な技術開発が成されていない安定化体(最終廃棄体となり得る)の長期安定性を評価するための試験評価法も提案する。さらに、県外最終処分施設自体の要求性能を整理し、導入技術システムと要求性能の関係を明らかにする。
また、原発事故の被害が大きかった中間貯蔵施設周辺復興地域が調和し、融合的に環境再生するための段階的シナリオが必要と考え、復興の具体的なイメージやシナリオを描くため、区域内の代表的環境である里地里山環境を再生させると同時に、地球規模の課題である脱炭素社会として被災地域のコミュニティを再構築するための将来環境デザインを地域と協働しながら提示する。さらに、地域統合評価モデルによって社会指標、経済指標、環境指標等を定量化し、将来デザインに応じた脱炭素型コミュニティを評価する。さらに里地里山を再生し、環境回復状況における科学的知見を提供するため、過去、現在の生物相モニタリング(ヒアリング等を含む)等を実施し、将来デザインに対応した生態系サービスを試算する研究にチャレンジする。
県外最終処分の実現や、中間貯蔵施設周辺復興地域の復興デザインにおいては、地域住民等のステークホルダーの意見が重要であることは言を待たない。それを支援するために、県外最終処分および中間貯蔵施設周辺復興地域の将来デザインに関する円滑かつ公正な合意形成に向けて、様々な処分オプションの社会受容性の評価、さらに多元的公正および、環境・社会・経済面を考慮した合意形成フレームワークを立案する。具体的には、持続可能な環境管理に向けた社会受容性評価として、半構造化面接および郵送法によるアンケートによって、1廃棄物の性状や処分場立地・箇所数、合意形成プロセスに応じた社会受容性の評価および2立地選定や区域内土地利用において、ステークホルダーに応じた重要指標の評価を行う。さらに、アンケート調査で得られた県外最終処分等に向けた重要指標の導入および本課題特有の特徴(次世代課題、立地候補地の制約が少ない)を組み込んだ環境・社会・経済を含めた多面的評価法の開発を進める。また、本課題の合意形成プロセスで重要となる多元的公正(手続き的公正性、衡平性や負担の分かち合い)と実験社会科学的手法により、対話の場として有効なプロセスデザインを提示する。最終的には、これらの結果から、多元的公正やステークホルダーの多面性を考慮した合意形成プロセスデザインの提示を行う。
研究テーマ
技術論・環境再生
テーマ1県外最終処分を実現させるための
技術システムの開発研究
- サブテーマ1.県外最終処分に向けた導入技術システムのシナリオ最適化
- サブテーマ2.各種安定化体の長期溶出特性の評価
- サブテーマ3.県外最終処分施設に求められる封じ込め性能に関する研究
環境創生・生態論
テーマ2地域資源・環境を活用した周辺地域の将来デザイン構築に関する研究
- サブテーマ1.周辺地域の将来イメージと未来技術導入のシナリオ構築および地域統合評価モデルによる定量化
- サブテーマ2.中間貯蔵施設周辺復興地域の将来デザインを見据えた生態系モニタリングとこれを活用した生態系サービスの試算
横断的検討・政策支援
テーマ3県外最終処分・周辺地域の将来デザイン利用に向けた
社会受容性評価と合意形成フレームワークに関する研究
- サブテーマ1.持続可能な環境管理に向けた社会受容性評価と多面的評価法の開発
- サブテーマ2.県外最終処分等に関わる多元的公正の実験的評価
2024年度以降の国による減容化・県外最終処分の検討に貢献。